私たちは普段、当たり前のように呼吸をしていますが、実はとても繊細な仕組みで成り立っています。
肺は自分の力だけでは膨らむことができず、胸郭の動きに助けられて空気を取り込んでいます。
その見えない力のバランスを説明するうえで欠かせないのが「経肺圧」という考え方です。
今回は、この経肺圧をわかりやすくイメージしながら、解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
経肺圧とは?
経肺圧とは、肺の「内側(気道内)からかかる圧力」と「外側(胸腔内)からかかる圧力」の差のことを指します。
肺は自分の力だけでは膨らむことができません。
呼吸筋や横隔膜が収縮すると胸郭が広がり、その結果、胸腔内の圧力が下がります。
このとき、肺の内側と外側に圧力の差(=経肺圧)が生まれ、肺が自然に膨らむのです。
経肺圧が0になってしまうと、肺が膨らまないので虚脱してしまいます。
そのため、人工呼吸器中は0にならないように管理していきます。
経肺圧をイメージしてみよう!
とはいえ、経肺圧の説明を読んだだけでは全然イメージがわかないですよね。
私が新人の頃もこんな感じでした。

え、圧力の差って…結局どういうこと?
ということで、イメージしやすいようにイラストを用意しました!

もし気道内圧が0で、胸腔内圧が−5だとしたら、経肺圧は5。
この+5が肺を押し広げる力になるのです。
しかし、実際の気道内圧は0より少し低く、吸気時に約-6〜-8cmH2O、呼気時には約-2〜-4 cmH2Oに保たれています。
これは胸腔内が陰圧で保たれているからです。
今回は、イメージしやすいように気道内圧を0としました。
人工呼吸器装着中の経肺圧を考えてみよう!
経肺圧を考えなければいけない状況は、人工呼吸器装着中です。
人工呼吸器装着中は、PEEPやプラトー圧によって気道内に圧力がかかります。
そこに自発呼吸があると、さらに肺に圧力がかかり経肺圧が上昇します。
一緒に具体的な例を見ながら考えてみましょう。
自発呼吸なしの場合
自発呼吸がない場合、呼吸筋が収縮していないため胸腔内が陰圧になることはありません。
そのため、人工呼吸器からの圧力のみが肺を押し広げる力になります。
気道内圧は30cmH2O以下で保つことが推奨されているため、仮に人工呼吸器からの圧力を30とします。
すると、イメージとしてはこのようになります。

気道内にかかる圧力が30で、胸腔内圧が0となるので、経肺圧は30となります。
文献によってさまざまありますが、経肺圧は通常30cmH2O以下での管理が推奨されています。

ARDSの場合は、25cmH2O以下での管理が推奨されているよ。
そのため、許容範囲内で管理ができているということになります。
強い努力呼吸(自発呼吸)がある場合
しかし、自発呼吸がある場合、特に強い自発呼吸がある場合状況が一変します。
気道内圧が30のまま、努力呼吸による強い自発呼吸で胸腔内に陰圧が生じて-15の力が加わったとします。
すると、イメージはこのようになります。

気道内にかかる圧力が30で、胸腔内圧が-15なので、経肺圧は45となります。
これでは、許容範囲を超え、肺胞へのダメージが強くなり、VILIやVALIを引き起こしてしまいます。
そのため、PEEPや吸気圧などを調整し、正常な経肺圧になるように調整します。
ARDSの肺保護戦略では、この経肺圧を適切に保つことで、肺胞を守りながらガス交換を維持することを目指しています。
経肺圧の測定方法

とはいえ、胸腔内圧ってどうやって測定するの?
胸腔内の圧力は体の中にあるため直接測ることはできません。
しかし、食道内圧を代わりに測ることで、胸腔内圧の近似値として利用できます。
なぜなら、食道は胸腔の中にある管なので、胸腔内の圧力変化を比較的正確に反映してくれるのです。
そのため、経肺圧は「気道内圧から食道内圧を引く」ことで計算できます。
まず、鼻や口から柔らかい圧力センサー付きのカテーテルを食道に挿入して測定します。
そして、人工呼吸器で気道内圧も測定し、経肺圧を算出します。
この値を確認しながら換気設定を調整することで、肺の過伸展や虚脱を防ぐことができ、特にARDSなどの重症患者の肺保護戦略に役立ちます。
まとめ
経肺圧は、肺の内側(気道内)と外側(胸腔内)の圧力差で肺を膨らませる力のことです。
肺は自力で膨らめないため、呼吸筋が胸郭を広げ胸腔内圧を下げることで経肺圧が生まれ、吸気が起こります。
呼気では胸郭が戻り、肺の弾性力で空気が押し出されます。
臨床では胸腔内圧を直接測れないため、食道内圧を代用して経肺圧を算出します。
これにより、肺の過伸展や虚脱を防ぎながら換気を管理することができ、特にARDSなどの重症患者の肺保護に役立ちます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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