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【102回看護国試】訪問看護師が行うインスリン自己注射の指導のコツを解説!

「インスリン注射の針が怖いから、看護師さんやって」

102回の看護師国家試験に出題された問題です。

この問題を解いてるとき、自分だったらどうやって声をかけようか迷いませんか?

看護学生
看護学生

患者さんが拒否しているから、無理にやらせてはいけないんじゃないかな…。無理にやらせて、インスリン注射そのものが嫌いになったら大変だし。

そう思うのは、あなたが患者さんの気持ちに寄り添おうとしている優しい方だからだと思います。

しかし、在宅看護のゴールの一つは「利用者さんの自立(セルフケアの確立)」です。

代わりに打ってしまうと、患者さんは「自分はできない人」のままになり、いつまでも自立できません。

優しさで行動を代行するのではなく、「心理的なメカニズム」を用いて関われるようにしましょう!

この記事では、インスリン自己注射の指導に必要な知識とその活用法について、詳しく解説していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

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過去問からインスリン自己注射の指導を考えよう!

第102回 午後54問

Aさん(78歳)は、妻(76歳)と2人で暮らしている。糖尿病と診断されている。認知症ではない。主治医の指示で、インスリン自己注射を指導するために訪問看護が導入された。Aさんは「針が怖いから、看護師さんが注射をしてください」と言う。

Aさんへの訪問看護師の対応で適切なのはどれか。

1. 「針は細いので怖くないです」
2. 「一緒に少しずつやっていきましょう」
3. 「注射ができないと家での療養は難しくなります」
4. 「そうですね。Aさんも奥さんもしなくていいです」

  1. 「針は細いので怖くないです」
    患者さんの「怖い」という主観的な感情を否定する言葉がけです。まずは恐怖心を受け止め、共感的に寄り添う姿勢が求められます。
  2. 「一緒に少しずつやっていきましょう」
    関心期にいる患者の恐怖心に寄り添った対応です。看護師と二人三脚でスモールステップを積み重ねることで、自己効力感を安全に育むことができます。
  3. 「注射ができないと家での療養は難しくなります」
    在宅療養への不安や脅しを与える発言であり、心理的負担を強めます。患者のモチベーションや自己肯定感を著しく低下させ、かえって行動変容を妨げてしまいます
  4. 「そうですね。Aさんも奥さんもしなくていいです」
    患者の恐怖心にただ同調するだけであり、治療の自立に向けた支援を放棄しています。主治医の指示であるインスリン治療の継続や、在宅療養の維持に繋がりません。

なぜ動けない?行動変容ステージから見る「針が怖い」の正体

「やりたくない」のではなく、「怖くてできない」。

このAさんの心理を紐解く最大のヒントが「行動変容ステージモデル」です。

患者さんの心の状態を無視して、看護師の理想を押し付けてしまうと、指導は絶対にうまくいきません。

まずはこの理論の基本と、Aさんの現在のステージを整理してみましょう。

行動変容モデルとは

行動変容ステージモデルは、1980年代にアメリカの心理学者によって禁煙の研究から提唱された理論です。

人が行動を変えるとき、一気にゴールへ行くのではなく、5つの階段(ステージ)を順番に登っていきます。

看護師がどれだけ「自分でやってほしい」と願っても、患者さんのステージに合わない指導をすると、拒絶されたり自立が遅れたりします。

つまり、「いま患者さんがどの階段にいるか」を見極めることが、指導の第一歩です。

「針が怖い」の正体と対処法

今回のAさんは、治療の必要性は理解しているものの、恐怖心が勝って動けない「② 関心期」の段階です。

ここでやりがちな失敗は、いきなり「さあ、自分で打ってみましょう(④実行期の関わり)」と迫ること。

これではAさんは恐怖で心を閉ざしてしまいます。

関心期にいるAさんへの正しいアプローチは、無理に自分でやらせることではありません。

「怖い」という気持ちを受け止め、まずは「これならやってみようかな(③準備期)」と思えるように、階段を「1歩だけ」登らせてあげることなのです。

そして、その階段を登るためのエネルギーになるのが、次にお話しする「2つの自信」です。

「自己効力感」と「自己肯定感」を行動の原動力に!

行動変容のステージを「②関心期」から「③準備期」へ進める。

そのためには、まず患者さんの恐怖心に寄り添うことが大切です。

そして、一歩を踏み出すための「自信」を育む必要があります。

では、自信を育みにはどうしたらいいでしょうか?

実は、自信は「自己効力感」と「自己肯定感」の2つから生まれます。

患者さんの行動をそっと後押しするためには、この2つの違いを正しく理解してアプローチしていくことが不可欠です。

自己効力感とは?

自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは、自分にはそれをやり遂げるスキルがあるという根拠のある自信のことです。

  • 「インスリン注射の単位合わせならできる」
  • 「消毒ならできる」

こういった特定の行動に対する自信を指します。

自己効力感を育むためには、「できた!」という小さな成功体験を積み重ねることが大切です。

いきなりインスリン注射のすべての行動を完成させるのではなく、まずは「キャップを外せた」「消毒ができた」といった、小さなステップから始めます。

この「自分にもできた」という達成感の積み重ねこそが、利用者さんの背中をそっと押してくれます。

自己肯定感とは?

自己肯定感とは、成果や評価に左右されず「ありのままの自分を大切に思える」という感覚です。

インスリンの練習では、手順を間違えるなどの失敗が必ず起こります。

このとき自己肯定感が低いと、「自分はダメだ」と全否定してしまい、挑戦する元気がなくなります。

逆にこれが高いと、「失敗したけれど次は工夫しよう」と立ち直る強さが生まれます。

この自己肯定感を育むには、成功という結果だけでなく、挑戦した努力や「怖い」という素直な感情を丸ごと受け入れることが重要です。

看護師が「怖いなか、今日はよく注射器に触れましたね」とプロセスを認めることで、利用者さんは「失敗しても大丈夫」という安心感を得られます。

この安心感こそが、何度でも再挑戦を可能にする心の土台になるのです。

第102回の過去問から考えるインスリン注射指導のアプローチ

Aさんは認知症は見られず、インスリン治療そのものを拒絶しているわけでもありません。

「針が怖い」と言っていることから、治療の必要性は感じつつも、恐怖心が勝って一歩を踏み出せない状態であると考察できます。

つまり、行動変容ステージは「②関心期」に該当します。

このステージの患者さんを次の「③準備期」へ向かわせるには、恐怖心を取り除き、自己効力感や自己肯定感を育んでいく必要があります。

そのため、今回の問題では、「一緒に少しずつやっていきましょう」と声をかけ、スモールステップで自信を育んでいく関わり方が最も有効であると判断できます。

訪問看護師が行うインスリン自己注射の指導まとめ

利用者さんの行動変容をサポートするときは、次の3つを意識するようにして関わりましょう!

まず「行動変容モデル」を使い、患者さんがいまどの心理段階にいるのかを正しく見極めます。

そして、次のステージへ進むためのパワーとなるのが2つの自信です。

行動の原動力となる「自己効力感」をスモールステップで高めつつ、失敗しても折れない「自己肯定感」で支えていきます。

看護の関わりに「なんとなく」はありません。

「いま、どのステージにいて、どちらの自信を育むアプローチが必要なのか」を理論的に考えることが、根拠に基づいた看護の実践に繋がります。

国試対策としてはもちろん、将来臨床に出てからもずっと使える強力な武器になりますので、ぜひセットでマスターしておきましょう!

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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