地域包括ケアシステムとは?
重度の介護が必要な状態になっても、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるためには、さまざまな支援が切れ目なく提供されることが大切です。
そのために設けられているのが「地域包括ケアシステム」です。
このシステムでは、次の6つの支援を一体的に提供することを目指しています。
- 住まい・住まい方
- 医療・看護
- 介護・リハビリテーション
- 介護予防・生活支援
- 保健・福祉
- 本人の選択と本人・家族の心構え
これらが地域で密接に連携することで、高齢者が安心して暮らし続けられる環境を整えることができます。

今後、認知症の高齢者がさらに増えていくと予想されてるから、そうした方も安心して地域で生活できるようにするために、地域包括ケアシステムの整備が重要だよ!
また、高齢化の進み方には、地域によって違いがあることにも注目する必要があります。
- 大都市部:全体の人口は横ばいだが、75歳以上の高齢者が急速に増加
- 町村部:75歳以上の増加は緩やかだが、地域全体の人口は減少
このように、それぞれの地域が抱える課題や状況は異なります。
そのため、すべての地域で同じ対応をするのではなく、地域ごとの実情に応じた柔軟な取り組みが求められます。
そのため、市町村を中心として活動が行われます。
市町村は、次のような視点で地域包括ケアシステムの構築を進めていくことが期待されます。
- 地域の特性を的確に把握すること
- 地域の自主性と主体性を活かすこと
- その地域ならではの課題に合った支援体制を整えること
こうした取り組みによって、どの地域に暮らしていても、高齢者が安心して自分らしい生活を続けられる社会を実現することを目指しています。
地域包括ケアシステムができた背景は「2025年問題」
地域包括ケアシステムが構築される背景には、「2025年問題」と呼ばれる課題があります。
2025年には、団塊の世代(約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、日本の高齢化が一気に加速すると予測されています。
この高齢化により、特に問題となるのが社会保障費の急増です。
高齢者の増加に伴って、医療費・介護費・年金・生活保護といった社会保障制度にかかる国や自治体の負担が大きくなります。
結果として、現役世代の保険料や税の負担がさらに重くなることが懸念されています。
また、医療や介護のニーズが拡大する一方で、医師・看護師・介護職といった人材の確保が難しくなることも課題です。
こうした課題に対応するため、国は「地域で完結する医療・介護体制」として地域包括ケアシステムの構築を進めています。

国は限られた人材・資源の中でも、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる、持続可能な高齢社会の実現しようとしてるよ!
地域包括ケアシステムの構成要素
①本人の選択と本人・家族の心構え
地域包括ケアシステムの大前提になるのが、植木鉢の受け皿にもなっている「本人の選択と本人・家族の心構え」です。
「どこで暮らし、どこで看取られたいのか。」
人生の最終段階における過ごし方について、自分の意思を持ち、それを誰かに伝えておくことはとても大切です。
しかし、ご本人の望みがそのまま実現するとは限りません。
経済的な事情や家族の状況、地域の支援体制など、現実的な課題がさまざまに存在するためです。
だからこそ、本人と家族が日頃からよく話し合い、「どう生きたいのか」「どう支えていきたいのか」といった心構えを持つことが、支援の出発点となります。
このような話し合いのプロセスを支える考え方が、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)です。
②すまいと住まい方
次に大切なのが、植木鉢として描かれている「すまい・住まい方」です。
地域包括ケアシステムにおける「すまい」とは、高齢者が人生の最期まで安心して暮らせる場所を意味します。
- 自宅
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- グループホーム
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム など
ここで重要なのは、「どこに住むか」だけでなく、「どのように暮らしたいか」という住まい方の選択です。
高齢者一人ひとりの生活歴や価値観に合った暮らしを支えることが求められています。
特に高齢単身世帯や低所得者層にとって、住まいの確保は大きな課題であり、地域としての支援体制が不可欠です。
③介護予防・生活支援
地域包括ケアシステムでは、「医療」や「介護」などの専門的な支援を受ける前に、日常生活を支える「介護予防・生活支援」がとても重要です。
要介護状態になる前からの支援を行うことで、高齢者ができるだけ長く、地域で自立して暮らし続けられることを目指しています。
サービスの土台として表現されている。
介護予防とは?
介護予防とは、高齢者が要介護状態にならないよう、心身の機能を維持・改善する取り組みです。
「要支援1・2」や「事業対象者」と呼ばれる高齢者が主な対象です。
- 体操教室や運動プログラム(転倒予防、筋力維持など)
- 栄養改善や口腔機能向上の指導
- 認知機能の維持・低下予防(脳トレ、会話、手芸など)
- 地域のサロン活動(交流の場で孤立防止)
- フレイル予防(心身の衰えの早期発見・対応)
生活支援とは?
生活支援とは、介護認定を受けていない高齢者や、軽度の支援が必要な高齢者に対し、日常生活をスムーズに送るための支援を行うことです。
特別な資格がなくても実施できる内容が多いため、自治体、NPO、ボランティア、民間事業者など多様な主体が担い手となります。
- 買い物や掃除などの生活援助
- 配食サービス
- 安否確認・見守りサービス
- 通いの場(サロン・カフェ・体操教室など)
- ごみ出し支援、移動支援、手続きの同行など
地域包括ケアシステムでは、こうした支援を「地域支援事業」として位置づけ、各市町村が中心となって整備・運営を行います。
④医療・看護
地域包括ケアシステムにおいて、「医療・看護」は高齢者の暮らしを支える大切な要素のひとつです。
急性期から在宅療養まで切れ目なくつなぐこと、そして医療と介護の連携を強化することが求められています。
医療の役割
地域包括ケアにおける「医療」は、病院だけでなく、かかりつけ医や訪問診療、在宅医療も含まれます。
つまり、入院・治療の場だけでなく、地域における“生活の中の医療”が重要になるのです。
- 急性期病院:治療が必要なときに入院する場
- 回復期リハビリテーション病院:退院後に機能回復を図る場
- 地域の診療所(かかりつけ医):日常の健康管理と慢性疾患の対応
- 訪問診療・在宅医療:通院困難な方への在宅対応
特に高齢者は、複数の病気を抱えながら生活を続けることが多いため、継続的かつ地域密着型の医療体制が不可欠です。
看護の役割
看護職は、医療と介護の“橋渡し役”として、地域包括ケアの中で大きな役割を果たします。
- 在宅での医療的ケアの実施(例:褥瘡ケア、服薬管理、点滴など)
- 医師と介護職の連携・調整
- 介護施設や自宅での観察と早期対応
- 療養生活の相談・支援(本人・家族への指導含む)
- ターミナルケアの実施(自宅での看取り支援)
看護師は、高齢者本人の身体状況や生活背景をふまえ、医療と生活の両面にアプローチできる専門職です。
病院に限らず、訪問看護、地域包括支援センター、特養・老健など、あらゆる場面で活躍しています。

「医療・看護」は、病気を治すことだけじゃなくて「地域で暮らし続けること」も支援しているよ。
⑤介護・リハビリテーション
「介護・リハビリテーション」は、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるための、日常生活の支援と機能維持を担う大切な要素の一つです。
介護とリハビリは、別々のものではなく、密接に連携しながら高齢者の生活全体を支える役割を果たしています。
介護の役割
介護は、日常生活で困難がある高齢者に対して、身体介護や生活援助などの支援を行うことです。
食事、排泄、入浴、移動といった基本的な生活動作(ADL)をサポートし、自立した生活の継続を支援します。
また、介護職は高齢者の「その人らしい生活」を理解し、寄り添う姿勢が求められます。
リハビリテーションの役割
リハビリテーションは、心身機能の回復や維持だけでなく、生活機能や社会参加を取り戻すことを目的としています。
病気や障害でできなくなったことを回復するだけでなく、環境を調整したり、工夫を加えたりすることで「できるようにする」支援です。
- 作業療法士による調理・掃除の訓練(IADLの向上)
- デイサービスでの集団体操(体力の維持)
- 自宅訪問での動作指導(在宅生活の継続)
- 地域のイベント参加支援(社会参加・役割づくり)
また、「地域リハビリテーション」の視点も重要です。
これは、専門職だけでなく、地域住民やボランティアも含めて、地域全体で高齢者の生活機能を支えるという考え方です。
介護施設や医療機関に限らず、地域のサロンや自治体の支援など、多様な場面でのリハビリ的アプローチが求められています。

介護職が日常生活の中で気づいた動作の変化をリハビリ職と共有することで、より実践的で効果的なリハビリが可能になり、「その人らしい生活」を送ることができるよ。
⑥保健・福祉
「保健・福祉」は、地域住民が自分の健康に関心を持ち、支え合いながら暮らせる地域社会を築くための重要な要素の一つです。
保健の役割
保健活動では、高齢者が心身ともに健康な状態で生活を続けられるよう、予防的な関わりを重視しています。
保健師や管理栄養士、地域の医療職が中心となって、以下のような支援が行われています。
- 健康教室や体操サロンなどの開催(生活習慣病・フレイル予防)
- 高齢者宅への家庭訪問(孤立防止、健康チェック)
- 地域住民への健康相談・保健指導
- 自治体窓口や地域包括支援センターでの個別支援
「自分の健康は自分で守る」=セルフケアの力を高めることも、地域での自立支援の一つです。
福祉の役割
福祉は、経済的・心理的・社会的に困難を抱える高齢者に対し、生活全体を支える視点で支援を行います。
特に、単身高齢者や認知症高齢者、生活困窮世帯への対応が重要です。
- 高齢者世帯の見守り・相談対応
- 生活保護や福祉サービスの申請支援
- 障害や生活困難に応じた社会資源の紹介
- サロンや居場所づくりによる社会的孤立の予防
また、社会福祉士などによる「ソーシャルワーク」は、制度と制度のすき間にある課題をつなぐ重要な働きです。

保健・福祉は、単なる制度の運用じゃなくて「地域全体で人を支えるしくみ」を築く活動だよ。
地域包括ケアシステムの単位
地域包括ケアシステムは、中学校区を基本とした単位ごとに整備されています。
この単位では、「おおむね30分以内」でこれまで説明してきた支援を受けられることが理想です。

“単位”っていうのは、地域を区切る目安みたいなもんだよ。
- 現実的な生活圏に合っている
→ 買い物、通院、散歩など、日常生活の行動範囲と一致しやすいから。 - 人口規模がちょうどいい
→ おおむね1万人程度とされ、必要な支援を整備しやすいから。 - 行政の支援計画にもなじみやすい
→ 地域ケア会議などを実施しやすく、地域資源の調整にも向いているから。
自分の地域の30分圏内にどんなサービスがあるか調べてみると、地域包括ケアのイメージがぐっと湧いてくると思うので、ぜひ調べてみてください!
地域包括ケアシステムの機能に欠かせない「自助・互助・共助・公助」
地域包括ケアシステムでは、「自助・互助・共助・公助」という4つの支え合いが大切な考え方とされています。
これらがバランスよく機能することで、高齢者が安心して暮らせる地域づくりが可能になります。
地域包括ケアシステムに関する看護師国家試験を解いてみよう!
地域包括ケアシステムについて正しいのはどれか。
1. 都道府県を単位として構築することが想定されている。
2. 75歳以上の人口が急増する地域に重点が置かれている。
3. 本人・家族の在宅生活の選択と心構えが前提条件とされている。
4. 地域特性にかかわらず同じサービスが受けられることを目指している。
正解:3
1. 都道府県を単位として構築することが想定されている。
中学校区を基本とした範囲で、約30分以内に駆けつけられる範囲としています。
2. 75歳以上の人口が急増する地域に重点が置かれている。
地域包括ケアシステムは、地域の特性に応じて構築するシステムです。75歳以上の人口が急増する地域ではありません。
3. 本人・家族の在宅生活の選択と心構えが前提条件とされている。
地域包括ケアシステムの土台となるのは、本人や家族の選択と心構えが欠かせません。
4. 地域特性にかかわらず同じサービスが受けられることを目指している。
地域包括ケアシステムは、地域の特性に応じてシステムを構築します。そのため、同じサービスを受けられることは目指していません。
地域包括ケアシステムの構成要素はどれか。
1. 交 通
2. 雇 用
3. 情 報
4. 住まい
正解:4
1. 交 通
地域包括ケアシステムに「交通」はありません。
2. 雇 用
地域包括ケアシステムに「雇用」はありません。
3. 情 報
地域包括ケアシステムに「情報」はありません。
4. 住まい
地域包括ケアシステムに「住まいと住まい方」があります。他に、
看護国試に出題される地域包括ケアシステムのまとめ
地域包括ケアシステムは地域の特徴に合わせて、市町村が主体となって構築するシステムです。
このシステムを構成するのが、次の6つです。
- 住まい・住まい方
- 医療・看護
- 介護・リハビリテーション
- 介護予防・生活支援
- 保健・福祉
- 本人の選択と本人・家族の心構え
これらのサービスは、中学校区を基本としたおおむね30分圏内の範囲で構築されています。
住み慣れた場所で自分らしく生活を続けていくために最も重要なのは「本人の選択と本人・家族の心構え」です。
地域包括ケアシステムは出題頻度は多くありませんが、状況設定問題の解答のヒントになることがあるため、しっかり勉強しておきましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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