労働者災害補償保険制度(以下、労災保険)は、看護師国家試験でいくつか問われています。
問題数としては少ないですが、基本的な内容は押さえておいて損はないでしょう。
労災保険とは?
労災保険は、仕事中または通勤途中に負ったケガや病気・障害あるいは死亡に対して給付が支払われる制度です。
会社に雇われている正社員やパート・アルバイトなどすべての働く人を対象としています。労働者が安心して働ける環境づくりのためにできた保険です。
労災保険への加入は、事業主の義務なので保険料の納付は事業主が負担しています。そのため、対象者は支払う必要がありません。
労災保険は、社会保険制度のひとつです。他の社会保険制度を詳しく知りたい方は、こちらを見てください。
労災保険のもとになる「労働者災害補償保険法」とは?

労災保険は、労働者災害補償保険法に基づき補償を行います。
労働者災害補償保険法が施行される前は、労働基準法が適応されていました。
しかし、労働基準法だと事業主のみが負担する規定になっており、お金のない事業主だと十分な補償を受けられませんでした。
そのため、労働者災害補償保険法を昭和22年に制定し、十分な補償が受けられるようにしました。
労災保険の給付内容は何があるの?
労災保険の基本的な補償は、勤務中もしくは通勤中に起こったケガや病気を対象としています。
そのうえで、給付内容には次の8種類あります。

ここまで理解できれば、問題は解けます。
だけど、ざっくりどんな給付内容か知っておくと、頭に残ると思うのでそれぞれの項目を解説していきます。
看護師国家試験に次の内容を問う問題は出ないので、読むのめんどくさい人は過去問に飛んでください。
労災保険① 療養補償等給付とは?
労働者が、勤務中もしくは通勤中に負ったケガや病気で療養を必要とする場合に支給され、現物支給の「療養給付」と現金支給の「療養の費用支給」の2種類があります。
療養の給付は、労災病院や労災指定病院などにかかると、原則として傷病が治癒するまで無料で医療が受けられます。
一方、療養の費用支給は、労災病院や労災指定病院以外で治療を受けた場合に費用を支給する制度です。治療費、入院費、看護料、移送費など治療に必要なものが含まれます。
療養補償給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険② 休業補償等給付とは?
労働者が、勤務中もしくは通勤中に負ったケガや病気によって休業が必要な場合、4日目以降から支給されます。
この場合、休業1日につき給付基礎日額の60%が支給されます。それに加えて、給付基礎日額の20%が特別委支給金として出ます。
休業補償給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険③ 傷病補償等金とは?
療養開始後1年6か月経過しても治癒せず、傷病等級(第1~第3級)に該当するとき、給付基礎日額の313日~245日分の傷病補償等金が支給されます。
傷病補償給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険④ 障害補償等給付金とは?
傷病が治癒しても身体に障害が残り、障害等級第1級~第14級に該当する者は、以下の補償が受けられます。
- 第1級~第7級:障害補償年金、障害特別支給金、障害特別年金
- 第8級~第14級:障害補償一時金、障害特別支給金、障害特別一時金
障害等級によってもらえる金額がことなります。また、障害年金よりも等級が細かく分けられているので、手厚い補償になっています。
障害補償給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険⑤ 遺族補償等給付とは?
労働者が勤務中もしくは通勤中に死亡した場合、遺族に遺族補償等給付が支払われます。
給付は下記の2種類あります。
- 遺族補償年金
- 遺族補償一時金
必要な書類を記入し、管轄の労働基準監督署長に提出すると受け取れます。
遺族補償等給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険⑥ 葬祭給付とは?
葬祭給付は、葬祭を行った者に対して支給されます。
埋葬料は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた金額になります。
葬祭給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険⑦ 介護補償等給付とは?
介護補償等給付は、傷病補償等給付または障害補償等給付を受給し、介護を受けている者に支給されます。
- 常時介護・随時介護を要する状態に該当している
- 現に介護を受けていること
- 病院または診療所に入院していないこと
- 介護老人保健施設、介護医療院、障害者支援施設(生活保護を受けている場合に限る)、特別養護老人ホームまたは原子爆弾被爆者特別養護ホームに入所していないこと
支給要件は、上記の通りです。
介護老人保健施設や特別養護老人ホームに入所している場合は、施設で十分な介護サービスを受けていると考えられ、給付対象にならないことに注意しましょう。
介護補償等給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
労災保険⑧ 二次健康診断等給付
定期健康診断等の結果、肥満・血圧・血糖・血中脂質の4項目すべてに異常所見があると認められた場合、二次健康診断および特定保健指導を二次健康診断指定医療機関で受けられます。
二次健康診断
- 空腹時血中脂質検査
- 空腹時血糖値検査
- ヘモグロビンA1c検査
- 負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)
- 頸部超音波検査(頸部エコー検査)
- 微量アルブミン尿検査
特定保健指導
- 栄養指導
- 運動指導
- 生活指導
ここも看護師国家試験では問われませんが、4項目(肥満・血圧・血糖・血中脂質)の正常値や異常値などの勉強はしておきましょう!
二次健康診断等給付の請求手続パンフレット(厚生労働省)
看護師国家試験で問われる労災保険のまとめ
労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者災害補償保険法をもとに作られた制度です。勤務中や通勤中のケガ・病気・障害・死亡に対して給付されます。
給付内容は、
- 療養補償
- 休業補償
- 傷病補償
- 障害補償
- 遺族補償
- 葬祭補償
- 介護補償
- 二次健康診断補償
上記8種類あり、該当するものが支給されます。
ここまでの内容を理解できたら、次の問題を解いていきましょう。
看護師国試に出題された労災保険に関する問題を解いてみよう!(全2問)
労働者災害補償保険法に規定されているのはどれか。
1. 失業時の教育訓練給付金
2. 災害発生時の超過勤務手当
3. 有害業務従事者の健康診断
4. 業務上の事故による介護補償給付
1. 失業時の教育訓練給付金
勤務中または通勤中の災害に関する保険なので関係ない。失業時の教育訓練給付金は、雇用保険法第10条で規定されている。
2. 災害発生時の超過勤務手当
「災害発生時」とあるが、個人に起こった勤務中または通勤中の災害ではないので関係ない。災害時の超過勤務手当は、労働基準法第33条で規定されている。
3. 有害業務従事者の健康診断
二次健康診断等給付に該当する場合は、給付されるが今回は関係ない。有害業務従事者の健康診断は、労働安全衛生法第66条で規定されている。
4. 業務上の事故による介護補償給付
労働者災害補償保険法第12条の8で、業務災害に関する保険給付として、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付が規定されている。
労働者災害補償保険法に規定されているのはどれか。2つ選べ。
1. 通勤災害時の療養給付
2. 失業時の教育訓練給付金
3. 災害発生時の超過勤務手当
4. 有害業務従事者の健康診断
5. 業務上の事故による介護補償給付
1. 通勤災害時の療養給付
通勤災害時の療養給付については、労働者災害補償保険法第7条で規定されている。
2. 失業時の教育訓練給付金
雇用保険法第10条で規定されている。ほかには、求職者給付、就職促進給付、雇用継続給付がある。
3. 災害発生時の超過勤務手当
労働基準法第33条で規定されている。
4. 有害業務従事者の健康診断
労働安全衛生法第66条で規定されている。
5. 業務上の事故による介護補償給付
労働者災害補償保険法第12条の8で規定されている。
どうでしたか?全問正解できましたか?
労災保険は、勤務中または通勤中の災害補償なので、問題文中にそのような文言がないか探してみましょう!
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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