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なぜ術後は高血糖になるのか?|理由を徹底解説!

国家試験対策

「術後はなぜ高血糖になるの?」と理由を聞かれて答えられなかった

「術後侵襲はどこから勉強を始めればいいのかわからない」

というような悩みを抱えている看護学生や新人看護師が多いのではないでしょうか。

術後の血糖コントロールがうまくいかないと、体の回復を遅くしてしまいます。

そのため、しっかりと根拠を理解してケアを行うのが重要です。

この記事では、術後に高血糖になってしまう原因について詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

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術後高血糖になるのは「糖質コルチコイド」が関与している

手術後は、生体の恒常性(ホメオスタシス)を保つため、内分泌系が活躍します。

その中でも代謝に影響を与えるのが「糖質コルチコイド」です。

糖質コルチコイドは、視床下部から放出される「糖質コルチコイド放出ホルモン」によって、副腎皮質から分泌されます。

このホルモンにより糖新生が促進され、高血糖状態になります

術後高血糖な理由①:糖新生の亢進

糖新生とは、ブドウ糖以外の物質からグルコースを産生することです。主にグルカゴン、コルチゾール、アドレナリンなどのホルモンが糖新生を亢進させます。

糖質コルチコイドが分泌されると、肝臓に蓄えられていたグリコーゲンがグルコースに変換され、エネルギーが確保されます。

しかし、絶食になると12~24時間で枯渇すると言われており、その後は、タンパク質や中性脂肪を分解してエネルギーが作られます

タンパク質の分解

糖質からのエネルギーが不足すると、筋肉に蓄えられているタンパク質が分解され、糖原生アミノ酸からエネルギーが生み出されます。

しかし、アミノ酸は人間の身体を構成している成分です。

エネルギー消費でアミノ酸を大量に使ってしまうと、体を作るアミノ酸が減ってしまい、筋力低下を起こします。

中性脂肪の分解

糖質やタンパク質からエネルギーを作り出せなくなると、今度は脂肪からエネルギーを作ろうとします。

脂肪は血中で中性脂肪(トリグリセリド)として蓄えられ、必要時に脂肪酸とグリセロールに分解してアセチルCoAからTCAサイクルを回してエネルギーを生み出します。

この過程でケトン体が生み出され、ケトアシドーシスを引き起こすことがあります。

術後は、ケトアシドーシスになっていないか確認することも重要です。

術後高血糖な理由②:インスリン抵抗性

体に生体侵襲が加わるとサイトカインが放出され、インスリンの分泌が抑制されてしまいます。

インスリンは血糖を下げる働きを持っているため、分泌が抑制されると、血糖が下がりません。

糖新生が亢進しているにも関わらず、血糖を下げる機能が働かないため高血糖になるのです。

では、高血糖の状態が続くと術後どのような影響があるのか見ていきましょう。

術後に高血糖が続くと何がおきるの?

術後に高血糖の状態が続くと、次のようなことが起こります。

  • 感染リスクが上昇
  • 創傷治癒遅延
  • 浸透圧利尿
  • 高浸透圧高血糖昏睡

なぜこのようなことが起こるのか、順番に見ていきましょう。

高血糖になると感染を起こしやすいのはなぜ?

高血糖状態になると、白血球の成分の一つである「好中球」の貪食作用が低下してしまいます。

また、細い血管の血流が悪くなります。隅々まで酸素が行き渡らず細胞の働きが低下します。

白血球は血液で移動するので、免疫細胞が行き届きづらいのも感染しやすさにつながっています。

高血糖で創部治癒が遅延するのはなぜ?

創傷治癒遅延が起こるのは、血流障害とタンパク質異化亢進が原因です。

血糖値が高いと血液はドロドロな状態です。細い血管へ通りにくくなり、血流が悪くなります。

血流が悪いと体の隅々まで酸素や栄養が行き渡らず、細胞が元気になれません。

また、皮膚や血管はタンパク質で出来ているので、異化亢進が続くと体内で使えるタンパク質が減少し、創部の治癒が遅延してしまうのです。

浸透圧利尿がおこるのはなぜ?

浸透圧利尿とは、高血糖状態になると血糖値が上昇し、血管外(組織)との濃度の差によって、組織の細胞から水分を血管内に引き込もうとする現象です。

その結果、血管内の水分が増え、体が増加した水分を尿として排泄しようとするため多尿が起こります。

術後は血管透過性の亢進により循環血液量が相対的に低下しやすく、浸透圧利尿が起こるとさらなる循環血液量減少を起こしてしまう可能性があります。

高浸透圧高血糖昏睡がおこるのはなぜ?

高浸透圧高血糖状態(HHS)は、糖尿病の合併症の一つです。手術後に高血糖が持続することで、昏睡を引き起こす可能性があります。

発生頻度は少なく、術後合併症としての認識は低い傾向にあります。いったん発症するとその死亡率は高く、早期発見・早期治療が重要です。

異常な高血糖と極度の脱水で起こりやすく、術後は循環血液量が減少しやすいので気を付ける必要があります。

術後の血糖値は「180mg/dl以下」で管理する

上記合併症を起こさないためには、血糖コントロールをしっかりと行う必要があります。

集中治療患者の血糖降下療法を検討する大規模な研究である「NICE-SUGAR trial」にて、術後の血糖管理について次のことが明らかになりました。

  • 80~108mg/dlで管理すると低血糖を起こしやすい
  • 144~180mg/dlで管理すると低血糖を起こしにくく、前者よりも死亡率が低い

血糖管理を行う上で、高血糖よりも低血糖の方が命に関わります。そのため、この研究から術後血糖は高めに管理するようになりました。

なので、手術後の血糖は「140~180mg/dl」での管理されている施設が多いと思います。

術後の高血糖はいつまで続くの?

術後の高血糖は、3日~7日ほどで落ち着きます。

ただし、もともと糖尿病がある場合は、1週間たっても血糖値が高い状態が続く可能性があります。

既往歴や血糖コントロール状況を確認して術後に起こりうるリスクを想定しておきましょう。

また、術後血糖指示もしっかりとチェックしておきましょう。

手術後の血糖管理はスライディングスケールが多い

血糖管理方法には、スライディングスケール法とアルゴリズム法があります。前者の方が急性期ではよく使われる方法です。

それぞれの方法を簡単に紹介します。

スライディングスケール法

測定した血糖値に基づいて、その時に注射するインスリン量を調節する方法です。

患者さんごとに病気の状態、今までの血糖値パターン、体重などを加味して医師があらかじめインスリン量を決めておきます。

作用時間が3~5時間と短い即効型インスリンが使われるので、4時間おきに血糖値を確認し、低血糖が起こっていないか確認します。

ただし、施設によって確認時間の感覚はことなるので、マニュアルに従ってください。

スライディングスケール法は、手術前後や感染症、急性期などで使うのに適した方法とされています。

アルゴリズム法

アルゴリズム法は、急性疾患の合併がない安定した糖尿病患者に使われる方法です。

あらかじめ設定した目標血糖値に到達させるために、2~3日間の血糖値の変動を見て、投与しているインスリンの量や打ち方を変えていきます。

この方法は、通常の生活リズムに応じてインスリン量を調節できるため、患者が自己管理しやすいという利点があります。

また、血糖値が安定してきたら、血糖測定の回数を減らすことも可能です。

術後の高血糖を看護師国家試験で復習してみよう!

第112回 午前44問

1. 傷害期では尿量が増加する。
傷害期は尿量の減少、循環血液量の減少が特徴的である。


2. 転換期では循環血液量が増加する。
サードスペースの体液が、転換期になると血管内に戻ってくるので、循環血液量が増加する。リフィリングという。


3. 筋力回復期では蛋白の分解が進む。
蛋白の分解が進むのは傷害期である。


4. 脂肪蓄積期では活動性が低下する。
脂肪蓄積期は、体重増加や月経の再開などが特徴的である。

第95回 午後8問

1. アルドステロン
アルドステロンは、循環血液量が低下した時に分泌される。低血糖とは関係がない。


2. テストステロン
低血糖時、テストステロンは分泌されない。


3. 副腎皮質刺激ホルモン
視床下部で低血糖を感知すると、分泌が刺激されます。また、侵襲時にも分泌され、糖新生を促します。


4. 甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは、下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモンによって合成・分泌が促進される。低血糖で分泌は促進されない。

第112回 午前78問

1. 発 熱
関係ない。


2. 浮 腫
関係ない


3. 口渇感
関係ない


4. 顔面紅潮
低血糖では、顔面紅潮または蒼白が生じるが、重要な低血糖の症状ではなく、5番ほど優先的でない。


5. 手足のふるえ
低血糖の症状として、手足のふるえのほか、あくび、空腹感、冷汗、頻脈などである。

第107回 午後85問

1. 症状の変化が乏しい。
急性期では症状の経過が急速に変化する。


2. エネルギー消費量が少ない。
急性期では、傷を治し体を元に戻すために大量のエネルギーを使う。


3. 身体の恒常性が崩れやすい。
急性期は身体の恒常性(ホメオスタシス)が崩れやすい。


4. 生命の危機状態になりやすい。
急性期は生命の危機状態になりやすい。


5. セルフマネジメントが必要となる。
急性期では医療依存度が高く、セルフマネジメントは難しい。

第109回 午前41問

1. 異化が亢進する。
生体に侵襲が加わるとエネルギー代謝が亢進して、損傷された組織を修復しようとアミノ酸や脂肪を使う。


2. 症状の変化は緩やかである。
急性期は、症状の変化が急激に起こる。


3. サイトカイン分泌が低下する。
侵襲を受けると、サイトカインの分泌は増加する。


4. 副腎皮質ホルモンの分泌が低下する。
急性期は、副腎髄質と副腎皮質からのホルモンの分泌が亢進する。

なぜ術後に高血糖になるのか理由まとめ

術後に高血糖が起こる原因は、糖質コルチコイドによる代謝亢進とインスリンに抵抗性が出るからです。

高血糖が持続すると、感染症や創傷遅延などを引き起こすため、適切な管理が必要です。

術後の血糖コントロールは、研究結果から140~180mg/dLとやや緩めの管理を行います。

スライディングスケールが採用され、低血糖を起こしやすいので4~8時間間隔で血糖測定を行いますが、施設ごとに異なるのでしっかりとマニュアルを確認しましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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